後でやります

テレビ産業についての記事を書いていきます。

 関東生まれ関東育ちの人は、地方に行った時にテレビを付けると、馴染みのないチャンネルに戸惑う事が多いと思います。日本のテレビ局は法律でエリアごとに放映権が分断されおり、日本テレビやTBSなど東京にあるテレビ局は関東県域しか放送権を持たず、別エリアでは異なるテレビ局が存在します。しかし、だからといってじゃあエリアごとに番組も全然異なるかというとそうではなく、在京の民放テレビ局(キー局)の系列局が各エリアに存在し、キー局と同じような番組を流していることがほとんどです。今回は、キー局とその系列に所属するローカル局について解説します。

① 日本のテレビ局(キー局と系列局)
スライド2


 図のように、日本には127の地上波テレビ放送事業者があり、どの局も総務省より各圏域での放送権を与えられた事業者です。その放送圏域は、関東圏・関西圏・中京圏を除いて、一局につき一県が基本となってます(岡山・香川や鳥取・島根など二県にまたがる地域もあります)。また、関東圏の放送局をキー局、関西圏・中京圏の放送局を準キー局と呼ぶことがあります。キー局は、TBS・日本テレビ・フジテレビ・テレビ朝日・テレビ東京の5局があり、各キー局は全国にテレビネットワークという組織を保有しております。キー局は、ネットワークの協定を通じて、各地方局と主に3種のネットワークを築いています。①番組供給のネットワーク、②報道のネットワーク、③営業のネットワークです。今回は、①の番組供給のネットワークについて言及します。


② 各局の自社番組制作比率
スライド3

 各テレビ局は、その所属するネットワークのキー局からの番組供給でほとんど放送番組をまかなっております。図2を見ると、キー局は自社の放送番組の90%を自社で作成しているのに対し、その他の局は自社制作比率は10%台となっており、ほとんどの番組をキー局の番組からまかなっております。地方局の自社制作番組も夕方やお昼のニュース・情報番組がほとんどで、ゴールデンタイムのバラエティ番組についてはほとんどがキー局制作のものです。
 

 ③番組制作比率の推移
スライド5

 各ネットワークの地方局における自社制作比率の推移を年度で見てみましょう。基本的にはずっと10%台で推移しておりますが、比較的テレビ朝日系とテレビ東京系は低いです。これは、系列に平成新局と呼ばれる平成以降に新設された局が多く、ネットワークとキー局への依存を前提として作られたためだと考えられます。地方でも老舗局の多いTBS系列や日本テレビ系列では、自社制作比率は比較的高いです。


 

 以前、週刊ダイヤモンドで『慶應三田会』なる雑誌が発刊されていたことをきっかけに、慶應幼稚舎とキー局や広告代理店への就職の関係に興味を持ちました。

 ① 三田会
スライド4
 
 前章でも述べた通り、慶應はほとんどのキー局で採用人数トップの割合を占めております。また、日本テレビやテレビ朝日では、慶應OBOGが三田会なる組織を作り、社内で学閥を形成しています。この三田会は、大学側から公式な組織として認可を受けております。

② 慶應幼稚舎
スライド5

 慶應出身の中でもひと際目立つのは、慶應幼稚舎という附属小学校上がりの方々です。プレジデント紙に記載されている内容では、 キー局勤務に慶應幼稚舎出身が多く、ある卒業生のクラスでは34人中3人がキー局に就職したと。およそクラスの9~10%がキー局に就職したとは驚きの数字です。また、テレビ局と関係の深い大手代理店(電通・博報堂)も含めると計6名、クラスの6人に1人以上の人間がキー局・電博に就職したことになります。

スライド6

 キー局や電博への就職割合が高いのは、その仕事内容のやりがいもさることながら、やはり給与の高さも一因にあると思われます。企業別の平均年収ランキングには上位15社のうち、キー4局と電通・博報堂の計6社がランクインしています。どの企業も平均年収1000万円を超えています。

スライド7
 
 「なぜキー局や広告代理店に幼稚舎出身が多いのか?」それは、両者の関係値を築く上で、幼稚舎出身同士というコネクションを期待しているからと思われます。キー局は電通など代理店が広告費を引っ張ってきて、電通には各キー局を担当するセッションがあり、両者は大変密接な関係にあります。人脈によって商談や取引がスムーズになる効果が期待できます。それは実際に現実のものとなっているとのことです。

スライド8
スライド9
 
 とあるクラスの幼稚舎出身者のデータをまとめましたが、やはりその放送・広告関係への就職者の割合は、大学での括りと比にならないほど高いです。おそらく日本一、放送・広告業界に近い学生集団と言えるのではないでしょうか。その理由は、個人のもつ人間的魅力だけでは説明できないような、彼らの持つ人脈が起因しているのかもしれません。

 ③ まとめ
図6
 
 企業で学閥を築く三田会、さらにその中で生粋の慶應出身といえる幼稚舎出身者は、格別のようです。大学上がりとは一線を画すような人脈が彼らに期待されている言えます。幼稚舎出身者が業界において大きな影響を持ち、また、それが後輩の幼稚舎出身を引き上げる連鎖があるとも感じます。学歴」という点では慶應幼稚舎卒が最も企業就職に有利な学歴なのかもしれません。

 

 第2章では、主要キー4局(TBSテレビ、日本テレビ、フジテレビ、テレビ朝日)それぞれがどのような大学卒業生を採用しているかをまとめてみたいと思います。今回も、第一章と同様に過去14年間のデータを基に調べました。

① 各キー局の出身大学別比率(総計)

 図
1 キー局 出身大学別採用人数の比率(200215年総計)
スライド9

 どの局も出身者は早慶が最も多いようです。どの局でも慶應がやや上回っています。フジテレビは約半数(47%)を早慶出身者が占めており、TBSは約1/4(24%)とやや少なめです。対照的に「その他大学」の比率はTBSが約半数(48%)と最も多いです。TBSテレビの入社者の出身大学は多様性に富んでいると思われます。一方で、日テレとTBSには東大閥があると言われていますが、比率的に他2局よりも高いことから、あながちその可能性は高いです。老舗局と言われ、歴史ある放送局でもありますので、
東大卒を重視する伝統があるかもしれません。

② 各キー局の出身大学別 人数と比率(年度別推移)

 図
2 キー局 出身大学別採用人数の年度推移 (200215)
スライド10

 図3 キー局 出身大学別採用比率の年度推移 (200215)
スライド11

 どのキー局も平均して30人前後は採用しているようです。ですが2010年の採用人数をピークにして、それ以降の人数は少なめです。リーマン・ショック時の業績悪化に伴う人員見直しのためでしょうか、その後経営が回復すると採用人数も元に戻しつつあるように思われます。2008年のテレビ朝日は、「その他大学」出身者が主要大学の人数を上回っています。

③ 各キー局 大学別出身者と卒業生に占める割合(総計)

 図
4 キー局 大学別出身者数と全卒業者数に占める割合 (200215年総計)
スライド12

 「各大学卒業者生のうち、どれだけの人数が各キー局に就職したのか」を示す図になります。早・慶は全キー局で高い割合を出しており、特にフジテレビで顕著です。テレビ朝日のみ慶應を抜いて一橋がトップとなっております。東大はやはり東大閥の影響か、相対的にTBSと日テレにおいて高い数字を出しています。ですがTBSでは大学別の大差がなく、どの大学生でも平等にチャンスがありそうに見えます。

 ④ まとめ
スライド13

図9

 上記の表には、NHKとテレビ東京も加えましたが、やはり私大なら早慶、国立なら東大・一橋が多いようです。一橋は、小規模な単科大ながらもテレビ朝日やテレビ東京での卒業者数に占める就職者数の割合がトップと、大きな存在感があります。フジテレビは早慶色が特に強く、TBSはあまり出身大学に偏りが見られないようです。あくまで傾向なので、実態は何とも分かりません。

次章では、慶應卒の中でも特に放送・広告に多いと言われる慶應幼稚舎出身者の実態に迫ります。

 

↑このページのトップヘ